【事例検討】「インスリン自己管理」の落とし穴…退院後に低血糖で再入院となった80歳男性のケース

介護

退院調整の現場でよくある「家族と同居しているから大丈夫」「ご本人は自己管理できると言っている」という判断。しかし、いざ蓋を開けてみると想像もしないトラブルが隠れていることがあります。

今回は、大腿骨骨折での入院から退院したものの、わずか数ヶ月で「低血糖」による再入院となってしまった80歳男性(A様)の事例をご紹介します。

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事例概要:80歳男性(A様)の退院時の状況

大腿骨骨折により3ヶ月間の入院生活を送られていたA様。無事にリハビリを終え、ご自宅へ退院することになりました。

【退院時のケアプランと状況】

  • 同居家族:娘さんと同居。そのため、家事支援・食事準備・服薬管理は「ご家族にお任せ」という方針。
  • 食事:夕食のみ配食サービスを利用。当初は糖尿病食を導入したが、「味が薄くて食べられない」とのご希望で途中から「普通食」へ変更。
  • インスリン管理:「病院では自己管理できていた」との情報から、支援なし(訪問看護等の介入はなし)。
  • 介護サービス利用:自宅のお風呂は転倒リスクが高いため、入浴目的で「デイサービス」を週数回利用。

家族同居で、インスリンも自分で打てる。一見すると、大きな問題なく在宅生活へ移行できたように見えました。


予期せぬ異変:デイサービスの休載と自宅での転倒

ある日、A様から「朝起き上がれない」と連絡があり、デイサービスを休むことに。
そしてその日のうちに、自宅内で転倒し、救急搬送となってしまいました。

診断結果は「低血糖」による意識障害と転倒でした。

判明した驚きの事実:隠れていた「管理不全」

再入院後、病院での聞き取りや調査を進めると、在宅生活での衝撃的な実態が次々と明らかになりました。

① 娘さんは薬に「一切ノータッチ」だった

「同居しているからご家族が見てくれているだろう」という支援側の思い込みとは裏腹に、娘さんは「お父さんが自分でやっていると思っていたので、薬のことは何も知らないし触っていなかった」とのこと。

② インスリンの打ち忘れと食生活の乱れ

ご本人はインスリンを打った後に食事を摂らなかったり、そもそも打つこと自体を忘れていたことが発覚。
さらに、昼食は手軽な「カップラーメン」で済ませている日も多く、血糖値の大幅な乱高下(急上昇と急降下)が日常的に起きていたと推測されます。

③ 繰り返す転倒と「新たな病気」の疑い

A様は今回の救急搬送以前にも、自宅で「めまいやふらつき」による転倒を何度も繰り返していました。さらに、今回の再入院中にも病院内で1度転倒されています。

ここでケアマネジャーとして頭を悩ませるのが、「この転倒の原因は一体何なのか?」という点です。

  • 低血糖による意識障害・めまいからの転倒なのか?
  • 3ヶ月の入院&加齢に伴う足腰の筋力低下による転倒なのか?

原因が絞り込めない中、さらに「右手に振戦(震え)」が出現。パーキンソン病の疑いが浮上し、現在精密検査を予定しています。(※パーキンソン病は確定診断が非常に難しい疾患でもあります)

課題整理:次回退院に向けて立ち塞がる壁

  1. 服薬・インスリン管理の再構築(自己管理・家族頼みは限界)
  2. 食事内容の見直し(カップラーメン生活・普通食への変更による血糖コントロール悪化)
  3. 転倒原因の究明と環境整備(低血糖・筋力低下・パーキンソン症状のトリプルリスク)
  4. キーパーソン(娘さん)との役割分担の再定義

低血糖のリスクを回避し、パーキンソン病疑いという新たな不安要素も抱えたA様。
私は退院に向けて、どのようなケアプランを作成すればいいのか――。

(次回へ続く)

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