介護費用の自己負担割合(1〜3割)の決まり方と、上限を超えたときの「高額介護サービス費」制度

介護

「介護保険を使うと1割負担って聞いたのに、うちは2割になっている…なぜ?」

「毎月の介護費用が高額になってきたけど、負担を軽くする制度はないの?」

こんな悩みをお持ちではありませんか?

介護保険サービスの自己負担割合は、実は所得によって1割・2割・3割の3段階に分かれています。さらに、その自己負担にも「月ごとの上限」を設ける「高額介護サービス費」という制度があります。今回は、この2つの仕組みをわかりやすく解説します。

※本記事の金額や区分は2026年8月時点の制度にもとづいています。制度は今後見直される可能性があるため、最新情報は市区町村の介護保険担当窓口でご確認ください。

介護費用の自己負担割合(1〜3割)の決まり方

介護保険サービスを利用すると、かかった費用のうち自己負担分だけを窓口で支払い、残りは介護保険から給付されます。この自己負担割合は、年齢や所得によって決まります。

40〜64歳(第2号被保険者)は一律1割

40〜64歳の方(第2号被保険者)は、所得にかかわらず自己負担割合は一律1割です。2割・3割という話は、65歳以上の方の制度だと考えておけば大丈夫です。

65歳以上(第1号被保険者)は所得に応じて1〜3割

65歳以上の方は、以下の2つの条件を組み合わせて負担割合が判定されます。

  • 本人の合計所得金額(給与・年金以外の所得なども含めた金額)
  • 同一世帯にいる65歳以上の方全員の「年金収入+その他の合計所得金額」の合計

この2つの条件を両方満たしたときに、はじめて2割・3割へと引き上げられる仕組みです。どちらか一方だけ基準を超えていても、もう一方が基準に届いていなければ1割のままです。

具体的な基準は次のとおりです。

負担割合本人の合計所得金額世帯の年金収入+その他合計所得
1割160万円未満
2割160万円以上220万円未満単身280万円以上/2人以上世帯346万円以上
3割220万円以上単身340万円以上/2人以上世帯463万円以上

💡 ここをチェック!

「本人の合計所得金額」が基準を超えていても、同居する65歳以上の方の年金収入等の合計が基準未満であれば、負担割合は1割のままです。逆に、本人の所得が低くても、同居する配偶者などの年金収入と合算した結果、2割・3割になるケースもあります。

なお、40〜64歳の方や住民税非課税の方、生活保護を受給している方は、この判定にかかわらず1割負担です。

負担割合は「自分で計算しなくていい」

負担割合は市区町村が前年の所得をもとに毎年判定し、原則として申請不要で、毎年7月頃に「介護保険負担割合証」が郵送されます。8月から翌年7月までの1年間有効なので、届いたら被保険者証と一緒に保管し、ケアマネジャーや利用する事業所にも共有しておきましょう。

前年の所得が変われば、翌年8月から割合が変わる可能性がある点も覚えておくと安心です。

【現場での体験談】負担割合証の「1割」を信じて請求したら、実は3割だった話

これは筆者が介護保険の請求業務をしていたときに実際にあった話です。

ある利用者様は娘様と同居しており、自宅での入浴介助が負担になってきたため、デイサービスで入浴していただく形でサービスを利用することになりました。負担割合証には「1割負担」と記載されていたため、そのまま1割で請求業務を行ったところ、後日「返戻」という形で請求が突き返されてしまいました。

理由を調べたところ、過去に介護保険料の滞納があったため、「給付制限」という措置により1年間は3割負担になっていたことがわかりました。厄介なのは、この給付制限の情報は負担割合証には記載されないという点です。お住まいの自治体(このケースでは大阪市)では、この情報は介護保険被保険者証の右端に記載されていました。

筆者にとっても初めてのケースで、うっかりこの記載を見落としてしまい、ご家族には見落としていたことをお詫びしたうえで、あらためて3割でご負担いただくことになりました。

負担割合証だけを見て「1割だから安心」と判断してしまうと、こうした見落としが起こり得ます。保険料の滞納歴がある場合は給付制限がかかっていないか、介護保険被保険者証もあわせて確認しておくと安心です。給付制限の記載箇所は自治体によって異なる可能性があるため、心当たりがある場合はケアマネジャーや市区町村の介護保険担当窓口に確認しておくとよいでしょう。

自己負担にも「上限」がある!高額介護サービス費とは

2割・3割負担になった方や、要介護度が高くサービスをたくさん利用する方にとって気になるのが、「結局、月にいくらまで払うことになるのか」という点です。

そこで用意されているのが、**1か月の介護サービスの自己負担(1〜3割の部分)が、所得区分ごとの上限額を超えた場合に、超えた分が払い戻される「高額介護サービス費」**という制度です。

課税世帯であっても対象になる点がポイントで、「うちは所得があるから対象外だろう」と思い込んでいると、本来受け取れるはずの払い戻しを見逃してしまうことがあります。

所得区分ごとの月額上限(2026年8月改定後)

所得区分月額上限
課税所得約690万円(年収約1,160万円)以上140,100円(世帯)
課税所得約380万円〜約690万円未満(年収約770万円〜)93,000円(世帯)
住民税課税世帯〜課税所得約380万円未満44,400円(世帯)
住民税非課税世帯24,600円(世帯)
うち、年金収入+その他の合計所得が82.65万円以下の方24,600円(世帯)/15,000円(個人)
生活保護を受給している方など15,000円(個人)

一番下の2つの区分では、世帯の上限24,600円とは別に、その方個人の上限が15,000円に設けられている点も押さえておきましょう。

たとえば、住民税非課税世帯の方が要介護度の高いサービスをたくさん利用し、1割負担額が月3万円になった場合でも、上限の24,600円を超えた分は申請すれば払い戻されます。

高額介護サービス費の対象にならない費用

注意したいのは、この制度が対象にしているのはあくまで「介護サービスの自己負担分」だけという点です。以下の費用は対象外になります。

  • 施設やショートステイの食費・居住費(こちらは「負担限度額認定(補足給付)」という別の制度の対象です)
  • 老人ホームの家賃・管理費などの月額利用料
  • 福祉用具の購入費・住宅改修費
  • 介護保険の支給限度額を超えて、全額自己負担で利用した分

「介護サービス代」と「家賃・食費」を分けて考えると、どちらの制度が関係するのかが整理しやすくなります。

【現場での体験談】負担割合の違いで、利用できる回数が変わることも

負担割合が1割と3割とでは、同じサービスを利用しても自己負担額に大きな差が出ます。実際の目安で比べてみましょう。

要介護2の方が1日型のデイサービスを利用した場合、1回あたりの自己負担はおよそ次のとおりです(サービス内容によって多少前後します)。

負担割合1回あたり週1回(月4回)週2回(月8回)
1割約829円約3,316円約6,632円
3割約2,487円約9,948円約19,896円

同じ「週2回、入浴目的でデイサービスに通う」という利用でも、3割負担では1割負担のおよそ3倍、月2万円近い自己負担になる計算です。

実際の現場でも、年金収入が高く3割負担となっている利用者様が、当初は週2回の利用を希望されていたものの、実際の負担額を知って「これなら週1回で十分」と回数を減らす判断をされたケースがありました。負担割合は所得によって決まる制度ですが、実際の生活の中では「サービスをどれだけ使うか」という選択に直結してしまう、ということがよくわかる例だと思います。

なお、住民税非課税の方や生活保護を受給している方は所得にかかわらず1割負担ですが、生活保護を受給している方の場合、その1割の自己負担分についても介護扶助という仕組みで賄われるため、実質的な自己負担は生じません。負担割合の制度を理解するうえで、あわせて知っておくとよいポイントです。

高額介護サービス費の申請方法と注意点

申請の流れ

支給の対象になると、多くの自治体では市区町村から申請の案内が届きます。一度申請して振込口座を登録すれば、以降は該当する月の分が自動的に振り込まれる運用が一般的です。案内が届かない場合や見落としてしまった場合は、市区町村の介護保険担当課に問い合わせてみましょう。

払い戻しには時効がある

高額介護サービス費を受け取る権利には時効があり、2年を過ぎると受け取れなくなります。「もしかして対象だったかもしれない」と思い当たる場合でも、2年以内であればさかのぼって申請できるので、早めに確認しておくことをおすすめします。

「扶養」や「世帯の課税状況」が判定に影響することも

高額介護サービス費の所得区分は、本人だけでなく世帯の課税状況によって判定されます。そのため、たとえば税法上の扶養に誰を入れているかによって世帯の課税区分が変わり、結果的に上限額の区分に影響が出るケースもあります。「非課税世帯のはずなのに上限が高い区分になっている」と感じたときは、世帯の課税状況を一度確認してみるとよいでしょう。

まとめ:まずは「負担割合証」と「上限額」を確認しよう

介護費用の自己負担についてのポイントを振り返りましょう。

  • 自己負担割合は所得に応じて1割・2割・3割の3段階(40〜64歳は一律1割)
  • 判定基準は「本人の合計所得金額」と「世帯の年金収入+その他合計所得」の両方を見て決まる
  • 負担割合は自分で計算する必要はなく、毎年届く**「介護保険負担割合証」**で確認できる
  • 自己負担にも所得区分に応じた月額上限があり、超えた分は「高額介護サービス費」として払い戻される(課税世帯でも対象)
  • 払い戻しの申請には2年の時効があるため、心当たりがあれば早めに市区町村へ確認する

介護費用は「割合」だけを見ると不安になりがちですが、「上限」がセットで用意されていることを知っておくと、見通しが立てやすくなります。まずはお手元の介護保険負担割合証を確認し、高額介護サービス費の対象になっていないか、一度チェックしてみましょう。

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