要介護認定を受け、デイサービスや訪問リハビリを組み合わせて生活している中で、「もっとリハビリや体のケアを増やしたいけれど、介護保険の限度額(区分支給限度基準額)がいっぱいでこれ以上増やせない…」という悩みに直面したことはありませんか?
特に脳卒中(脳梗塞など)の後遺症による半身麻痺や手足の強張り(麻痺・拘縮)がある場合、本人の「体を動かしたい」「麻痺による突っ張りや痛みを和らげたい」という意欲が強いほど、回数の制限がもどかしく感じられます。
今回は、そんな時に選択肢となる「医療保険を使った訪問マッサージ・鍼灸」の活用法と、利用の大きな壁となる「医師の同意書」について分かりやすく解説します。
介護保険の枠を気にせず使える「訪問マッサージ・鍼灸」とは?
介護保険のリハビリ(訪問看護からのリハビリやデイケアなど)は、要介護度に応じた限度額の枠内でやりくりする必要があります。
しかし、国家資格(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師)を持った治療院が行う「訪問マッサージ・訪問鍼灸」は、介護保険ではなく「医療保険(健康保険)」が適用されます。
そのため、介護保険の限度額(支給限度額)を一切圧迫せずに利用できるのが最大のメリットです。
主な効果と期待できること
- 麻痺・関節拘縮の緩和:固まった筋肉をほぐし、関節の動く範囲を維持・拡大する
- 痛みや痺れの和らげ:血行を促進し、神経痛や循環障害による痛みを緩和する
- むくみ・血行促進:自分で体を動かせない方の血流やリンパの流れを改善する
訪問マッサージ・鍼灸にかかる費用の目安(医療保険適用)
医療保険が適用されるため、費用は「かかった費用全体の1割~3割(自己負担割合)」のみとなります。
料金は「施術料」+「訪問料(出張費)」で計算され、国によって一律で定められているため、どの事業者を選んでも基本的な計算方法は同じです。
1回あたりの自己負担額の目安(ご自宅に訪問・1割負担の場合)
| サービス内容 | 負担割合 | 1回あたりの自己負担額目安 |
|---|---|---|
| 訪問マッサージ (全身・5局所の場合) | 1割負担 | 約400円 ~ 500円 |
| 訪問鍼灸(はり・きゅう) | 1割負担 | 約400円 ~ 500円 |
※初回のみ、初検料(約200円~300円程度)が加算されます。
※75歳以上の方(後期高齢者医療制度)などで「1割負担」の場合、1回あたりワンコイン(500円前後)で受けられるケースがほとんどです。
※2割負担の方は約2倍、3割負担の方は約3倍の金額となります。
※障害者手帳をお持ちで「重度障害者医療費助成制度(マル障害)」などの助成対象となっている場合、自己負担額が0円(または上限あり)になることもあります。
介護保険との費用の違い
- 介護保険のリハビリ:1単位あたりの地域区分や加算によって複雑になりがち。使えば使うほど限度額(枠)を消費する。
- 医療保険の訪問マッサージ:1回数百円程度と料金が明朗で、介護保険の限度額には一切影響しない。
週に2回利用した場合でも、月額の自己負担額は 約3,500円~4,000円前後(1割負担の場合) に収まることが多いため、家計への負担を抑えながらリハビリ・麻痺ケアの回数を増やすことができます。
利用するための最大の壁「医師の同意書」
医療保険を適用して訪問マッサージや鍼灸を受けるには、「医師の同意書(診断書のような書類)」が絶対に必要です。
しかし、実際に手続きを進めようとすると、「主治医に同意書の記載をお願いしたのに断られてしまった…」というケースが少なくありません。
なぜ主治医に断られることがあるの?
医師によって考え方や方針は様々です。
- 医学的根拠に対する考え方:東洋医学やマッサージの効果に対して慎重な姿勢をとる医師もいるため
- 過去のトラブル事例:過去に他患者でマッサージ・鍼灸施術に起因するトラブルがあったなどの理由から、病院全体で書かない方針にしている場合がある
主治医に断られると「もう訪問マッサージは受けられないの?」と諦めてしまいがちですが、決してそうではありません。
主治医に断られたらどうする?「別の医師」に依頼しても大丈夫?
結論から言うと、制度上主治医以外の医師(近隣の整形外科や内科など)が同意書を発行することは問題ありません。
厚生労働省の通知でも「原則として主治医」とされていますが、主治医が書かない方針である場合や正当な理由がある場合は、他の医師の診察・判断のもとで同意書を発行してもらうことが可能です。
別の医師に相談する際の流れと注意点
- 事業所に相談・医師の紹介を受ける 利用を検討している訪問マッサージ・鍼灸の事業者へ「主治医に同意書を断られた」旨を相談します。事業所によっては、鍼灸やマッサージの必要性に理解のある協力体制のあるクリニック(整形外科等)を案内・紹介してくれることがあります。
- 必ず「診察」を受ける(重要!) 「同意書を書いてくれる医師を紹介してもらう」といっても、受診せずに書類だけ発行してもらうことは法律上できません。 紹介されたクリニックを直接受診(または往診)し、現在の麻痺状態や身体状況を正しく診察してもらった上で、医師の医学的判断により同意書を作成してもらいます。
- ケアマネジャー・主治医への配慮・連携 医療保険での訪問マッサージを始める際は、必ず担当のケアマネジャーに報告しましょう。 ケアマネジャーや訪問リハビリの担当者(理学療法士等)と情報共有をしておくことで、「リハビリで全体的な動作訓練を行い、マッサージで筋肉の緊張をほぐす」といった、お互いの強みを活かしたチームケアが可能になります。
まとめ:制度を賢く組み合わせてQOLを高めよう
要介護3で介護保険の限度額が限界であっても、医療保険を上手に組み合わせることで、ご本人の状態維持や痛み・麻痺のケアを拡充することができます。
主治医に同意書を断られたからといって諦める必要はありません。訪問マッサージ事業所の担当者やケアマネジャーに相談しながら、適切な手続きを踏んでご本人の生活の質(QOL)を高めるアプローチを探していきましょう。
※訪問マッサージ・訪問鍼灸の医療保険適用には、歩行困難などの要件や定期的な同意書の更新(再同意)が必要です。具体的な費用や適用の可否については、お近くの訪問マッサージ事業者やケアマネジャーにご相談ください。
