親の資産(株・預貯金)を介護資金にするための事前準備と凍結対策【チェックリスト付き】

介護

はじめに

「親の介護費用は、親自身の資産から支払いたい」

そう考えている方は多いのではないでしょうか。しかし、親が認知症などで判断能力が低下すると、親名義の銀行口座や証券口座が凍結され、お金が引き出せなくなるリスクがあることをご存じですか?

「お金はあるのに使えない」という最悪の状況を防ぐために、親が元気な今のうちにやっておくべき事前準備と具体的な対策を分かりやすく解説します。

1. 「口座凍結」で起きる困りごととは?

金融機関が名義人の判断能力低下(認知症など)を把握すると、原則として資産の取引が制限されます。

  • 介護施設の入居一時金や月額費用が払えない
  • 親が保有している株式や投資信託を売却して現金化できない
  • 毎月の医療費・生活費を子どもが一時的に立て替えることになる

特に株式などのリスク資産は、相場が暴落した際でも売却手続きができず、資産価値が下がっていくのを指をくわえて見ているだけ……というリスクも存在します。

50代女性・主婦
50代女性・主婦

事例1:施設入居費の払込直前に口座が凍結
【状況】
母(80代)の認知症が進行し、介護施設への入居が決まりました。入居一時金として約200万円が必要だったため、母の預金口座から引き出そうと銀行の窓口へ向かいました。

【トラブル】
窓口で「母の介護費用で使う」と伝えた際、本人確認のために同行していた母へ行員がいくつか質問をしたところ、生年月日や今日の 日付が言えず、意思確認が取れないと判断されてしまいました。その場で「口座の凍結」が宣言され、本人の口座からの引き出しが不可能に。

【結末】
成年後見人の選任手続きを弁護士に依頼したものの、手続きが完了して口座からお金を動かせるようになるまで約半年かかりました。その間の入居一時金や毎月の施設費用(約20万円/月)は、すべて息子の貯金から立て替えるハメになり、家計が非常に圧迫されました。

40代男性・会社員
40代男性・会社員

事例2:株の暴落局面で売却・現金化が不能に
【状況】
父(70代後半)が脳脳梗塞で倒れ、会話や判断が困難な状態に。父は昔から株取引が好きで、特定の個別銘柄(株式)を中心に数千万円規模の資産を保有していました。

【トラブル】
介護費用を捻出するため、父の証券口座から株を売却して現金化しようと証券会社に連絡したところ、「ご本人様以外の注文・売却指示は受け付けられない」とお断りされました。さらに、ちょうどその時期に株式市場全体が下落トレンドに入り、含み益があった株がどんどん目減りしていくのを指をくわえて見ていることしかできませんでした。

【結末】
結局、家庭裁判所を通じて法定後見人を立てる手続きを行いましたが、後見人が選任された頃には株価が大幅に下落。また、成年後見制度では「リスク資産の売却や移動」に裁判所の許可が必要になるケースも多く、資産の柔軟な運用や迅速な現金化がいかに難しいかを痛感しました。

50代男性・自営業
50代男性・自営業

事例3:暗証番号の失念とキャッシュカードのロック
【状況】
一人暮らしの父(80代)が物忘れが激しくなり、カードの暗証番号を何度も間違えてATMでロックがかかってしまいました。

【トラブル】
ロック解除のために父を連れて銀行窓口に行きましたが、父自身が自分の名前や住所を正しく書くことができず、意思疎通も難しい状態。行員から「これ以上の手続きはお受けできません」と言われ、カードの再発行も暗証番号の再設定もできなくなりました。

【結末】
事前に「代理人カード」を作っていなかったため、父の口座は完全にロック。毎月のデイサービス代や公共料金の引き落としはかろうじて口座から引き落とされるものの、新規でのまとまった現金引き出しができなくなり、日常生活のサポート費用も子どもが毎回自腹で支払うことになりました。

2. 今すぐ確認!事前準備チェックリスト

親が元気なうちに、以下のステップを一緒に確認しておきましょう。

準備項目チェック内容
資産の把握利用している銀行口座・証券口座の一覧があるか
暗証番号・書類通帳、キャッシュカード、重要書類の保管場所を知っているか
銀行の代理人登録代理人カード(または代理人指名手続き)の発行を済ませているか
証券口座の代理人登録取引のある証券会社で「代理人取引制度」を申し込んでいるか
将来の方針介護が必要になった際、どの資産から優先して使うか話し合っているか

3. 事前に取れる具体的な3つの対策

① 代理人カード・代理人指名制度の利用

多くの銀行や証券会社では、本人の判断能力が十分なうちに「代理人」を指定しておく制度を用意しています。日常生活での医療費の引き出しや、証券口座での一定の運用管理をスムーズに行うための第一歩です。

② 家族信託の契約(まとまった資産・株式がある場合)

不動産やまとまった株式・預金がある場合は「家族信託」が非常に効果的です。親(委託者)が子ども(受託者)に財産の管理権限を託す契約を結ぶことで、認知症発症後も子どもが親のために口座管理や株の売却を行えます。

③ 成年後見制度の理解と検討

事前対策が間に合わずに凍結してしまった場合の選択肢として「成年後見制度」があります。ただし、家庭裁判所の関与が必要となり、資産の使い道に一定の制限がかかる点に注意が必要です。

まとめ:一番の対策は「元気なうちの会話」

資産凍結対策で最も重要なのは、「親が元気で判断能力がしっかりしているうちに話し合うこと」です。

切り出しにくいテーマではありますが、「万が一の時に困らないように」と伝えることで、親にとっても子どもにとっても安心な準備を進めることができます。まずはチェックリストの項目から一つずつ確認してみてはいかがでしょうか。